今回のバーチャルコンサートでは、台湾人を主軸として、海、山、土地という3つのテーマを45分のプログラムに仕上げた。昊恩(ハオウン)、南王姊妹花(ナンワン・シスターズ)、生祥楽隊(Sheng Xiang & Band)が台湾民謡や先住民族、客家の音楽作品を披露し、この島の声を紡いで、心からの祈りと感謝を伝える。映像では、ムーンシャインアニメ/夢想動画とベテランのクリエイティブ・ディレクター王舒音(ドルチェ・ワン)とが手を携え、ディープ・スキャン・テクノロジーを用いミュージシャンの表情を捉え、それを楽曲と組み合わせ、アニメーションのアートワークには、曲のイメージや台湾の文化や自然の特徴が取り入れられている。テクノロジーとマルチメディアが融合したこの音楽体験に観客は浸り、この島の作品に耳を傾け、台湾人の豊かで多様な生活を目にする。
故事島/ストーリー・アイランドは、李欣芸(シンシン・リー)が台湾を旅したときのミュージックアルバムがベースになっている。旅先で触れた心温まるエピソードや人々の純朴さを記録したもので、日月潭のきらめく湖面、かつての台北のにぎわいも、すべてリーの感動的な音楽の一部となっている。白鹿を探す神話を映像化し、観客を湖畔から台湾音楽の新天地、高雄流行音楽中心(高雄ミュージックセンター)といざない、新しい音楽の饗宴を開く。長い間歌い継がれてきた台湾の民謡を、古典的なオーケストレーションのもとで、特別ゲストの昊恩(ハオウン)がバーチャルコンサートの誕生を祝い、歌い上げる。
先住民族プユマ族南王部落の出身。今回の公演では、南王部落の音楽の父、陸森宝(ルー・センバオ)の作品で、部落で長年歌い継がれている「イエス・キリスト」、「天国にいるかのように」、「Sling Sling Sling頌祭祖先」をメインに、ツォウ族の高一生が残した日本語の作品「長春花」をも歌唱する。歌声は、山脈、竹林、雲海と、自然のなかにこだまし、雲の切れ間から降り注ぐひかりと鳩はイエス・キリストの光の筋となり姿を現す。プユマ音楽の美しさと祝福だけではなく、日本語の歌「長春花」では、日本への祈りが歌われる。
音楽面では、林生祥(リン・シェンシャン)は月琴での創作方法を用い、伝統的な楽器を現代の演奏に用いることを真剣に考え、増弦、弦の設定、調弦、そして、さまざまな音響の可能性を試み、現代的な演出で条件が変化するなかで、それでも伝統に背くことのない音色を生み出した。このように行きつ戻りつしながら構築した音楽的考察の路は、彼の音楽をより真摯で充実したものにしている。歌詞には「いつも家に帰る途中」という土地の言い伝えが同様に語られている。物語は傷だらけで痛々しく展開していく。昔の農耕や生活様式が近代化、工業化、汚染、グローバル化によって乱され、追いやられていく中で、大都会に移住する方法を見つけられない村人たちは、故郷で大切にしてきたものが消えていくのを黙って見ているしかなかった。自分たちの言葉さえ、国によって強制された「教科書」や「勉強」によって奪われてしまった。しかし、その村の出身である次の世代の放浪者が、オデュッセイアのようだが、彼が本当に家に帰る道を見つけ、また、村に残った者は、環境破壊に抗議する声を探し当て、自分たちの言葉と土地を取り戻すために、絶え間ない取り組みを始めた。視覚的には、仕事のために大都会に行く旅人を長旅に出るトラックで表し、その後、故郷に戻って野菜を育てる過程は、農村生活の純粋さや故郷の言葉や土地への愛着を浮き彫りにしている。
『台湾人』音楽会プログラム
故事島/ストーリー・アイランド&昊恩(ハオウン)
1. 湖岸月光
2. ⼤稲埕
3. 台湾民謡組曲
—天公落水/レイニング・スカイ:客家山歌
—丟丟銅仔/ティゥティゥタンアー(トンネル節):宜蘭民謡
—独⽊⾈/カヌー
4. プユマ山
南王姊妹花(ナンワン・シスターズ)
1. イエス・キリスト
2. 長春花
3. 天国にいるように
4. Sling Sling Sling 頌祭祖先
生祥楽隊(Sheng Xiang & Band)
1. 秀貞の菜園
2. 種樹/プランティング・トゥリー
3. 打烏子/バード・ベリーズ
Part of Animated Landscapes 3D Models: TAICCA-Taiwan Digital Asset Library
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